遺言とは、自分が生涯をかけて築き、守ってきた大切な財産を、最も有効・有意義に活用してもらうために行う、遺言者の意思表示です。
世の中では、遺言がないために、相続を巡って親族間で争いの起こることが少なくありません。しかし、今まで仲の良かった者が、相続を巡って骨肉の争いを起こすことほど、悲しいことはありません。
遺言は、このような悲劇を防止するため、遺言者自らが、自分の残した財産の帰属を決め、相続を巡る争いを防止しようとすることに主たる目的があります。
遺言は、遺言者の真意を確実に実現させる必要があるため、厳格な方式が定められています。その方式に従わない遺言はすべて無効です。「あの人は、生前こう言っていた。」などと言っても、どうにもなりません。録音テープやビデオにとっておいても、それは、遺言としては法律上の効力がありません。遺言の方式には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言という3つの方式が定められています。
自筆証書遺言
遺言者が、紙に、自ら、遺言の内容を手書きし、日付、氏名を書いて、署名の下に押印することにより作成する遺言です(パソコンやタイプライターによるものは無効です。)
○メリット
自筆証書遺言は、自分で書けばよいので、費用もかからず、いつでも書けるというメリットがあります。
○デメリット
内容が簡単な場合はともかく、そうでない場合には、法律的に見て不備な内容になってしまう危険があり、後に紛争の種を残したり、無効になってしまう場合もあります。しかも、方式が厳格なので、方式不備で無効になってしまう危険もつきまといます。
また、自筆証書遺言は、その遺言書を発見した者が、必ず、家庭裁判所にこれを持参し、その遺言書を検認するための手続を経なければなりません。さらに、自筆証書遺言は、これを発見した者が、自分に不利なことが書いてあると思ったときなどには、破棄したり、隠匿や改ざんをしたりしてしまう危険がないとはいえません。
公正証書遺言
遺言者が、公証人の面前で、遺言の内容を口授し、それに基づいて、公証人が、遺言者の真意を正確に文章にまとめ、公正証書遺言として作成するものです。
○メリット
公正証書遺言は、複雑な内容であっても、法律的に見てきちんと整理した内容にできるので、方式の不備等で遺言が無効になるおそれがありません。自筆証書遺言と比べて、安全確実な遺言方法であるといえます。
また、公正証書遺言は、家庭裁判所で検認の手続を経る必要がないので、相続開始後、速やかに遺言の内容を実現することができます。さらに、原本が必ず公証役場に保管されますので、遺言書が破棄されたり、隠匿や改ざんをされたりする心配も全くありません。公正証書遺言は確実に秘密を守ることができる遺言です。
○デメリット
公証人に支払う費用のかかることが難点と言えるでしょう。
また、公正証書遺言をするためには、遺言者の真意を確保するため、証人2人の立会いが義務づけられています。証人になることができる人についても制限もありますので、信頼できる人がいない場合には費用を支払って立会いしてもらうことになります。
秘密証書遺言
遺言者が、遺言の内容を記載した書面(自筆証書遺言と異なり、ワープロ等を用いても、第三者が筆記したものでも構いません。)に署名押印をした上で、これを封じ、遺言書に押印した印章と同じ印章で封印した上、公証人及び証人2人の前にその封書を提出し、自己の遺言書である旨及びその筆者の氏名及び住所を申述し、公証人が、その封紙上に日付及び遺言者の申述を記載した後、遺言者及び証人2人と共にその封紙に署名押印することにより作成されるものです。
○メリット
遺言書が間違いなく遺言者本人のものであることを明確にでき、かつ、遺言の内容を誰にも明らかにせず秘密にすることができます。
○デメリット
公証人が、その遺言書の内容を確認することはできませんので、遺言書の内容に法律的な不備があったり、紛争の種になったり、無効となってしまう危険性がないとはいえません。
また、秘密証書遺言は、自筆証書遺言と同じように、この遺言書を発見した者が、家庭裁判所に届け出て、検認手続を受けなければなりません。
上記のほか、法的な知識が必要になる部分もありますので、詳細をご相談された上で作成を行なわれることをお勧め致します。
メリット・デメリットを理解して、あなたに最も適した遺言書を選びましょう。